ADHDで仕事についていけず辞めたいけど、
退職は逃げるみたいで罪悪感がある…
ADHDで仕事を辞めたいけど、この先転職できる自信もない。こんな自分に合う仕事なんてあるんだろうか…
でもこのまま今の職場でお荷物をやっていてもなあ…
などと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
仕事のことで毎日ずっと悩んでいたらつらいですし、段々、何をどうしたらいいかわからなくなっていきますよね。
この記事では、一般雇用も障害者雇用も経験しているADHD当事者である筆者が、ADHDで仕事を辞めたい人に向けて、ADHDの人でも優先順位がわかりやすいように、やるべきことや手順を解説します。
■ADHDが仕事を辞めたい時にやるべきこと・手順
- 退職の事前準備の手順
- 退職時の手順
- 退職後~転職までにやるべきことの手順
退職=逃げることではない。無理せず仕事を辞めてOK
この章では、合わない仕事は無理せず辞めてよいということと、その理由を解説します。
状況を放置すると二次障害を発症、または重症化させてしまう
結論として、ある程度の期間続けていても合わないと感じる仕事なら無理せず辞めましょう。
ADHDの特性によりトラブルが起きている状態が長期間にわたって続くと、うつや双極性障害などの二次障害を引き起こすリスクが高まります。既に二次障害に罹患している場合は、重症化してしまい、入院や望まぬ形での退職を強いられてしまうリスクもあります。
いちど二次障害に罹患したり、重症化してしまえば、仕事に復帰するのは年単位で難しくなることがあります。
「就労不能になる」という最悪の事態を防ぐためにも、合わない仕事からは無理せず離れることをお勧めします。
ADHDが仕事を辞めたいと感じる特性上の理由
ADHDを持つ人が仕事を辞めたいと考える背景には、ADHDの特性が大きく関わっています。
不注意による困難
不注意はADHDの主要な特徴の一つです。業務においては、
- ケアレスミスが多い
- 重要なタスクでも忘れてしまう
- スケジュール管理ができず納期に間に合わせられない
- 段取りが悪く仕事が遅くなる
- 細かい作業手順を見落としてしまう
といった行動に現れます。
多動による困難
多動は、常に何かをしていなければならないと感じさせる特性です。業務においては、
- 長時間座って作業することが難しい
- 衝動的に余計なことを言ってしまう
といった行動に現れます。
こだわりの強さによる困難
ADHDのある人は、特定のタスクやルーチンに対して異常なほどこだわりを見せることがあります。
これは柔軟性の欠如として現れることがあり、臨機応変な対応が難しくなることがあります。
業務においては、
- 興味のないことには注意を向けられない
- 過集中により優先順位の低い仕事に長時間のめり込み、大事な仕事を疎かにしてしまう
といった行動になって現れます。
2-1~2-4による人間関係の悪化
2-1~2-4で解説したADHDの特性は、結果的に職場での人間関係の悪化につながります。
不注意や多動によるミスや問題行動が、同僚や上司との関係に亀裂を生じさせてしまうのです。
ADHDが仕事を辞めたいと感じる原因を作るケース
この章では、ADHDが仕事を辞めたいと感じる原因を作ってしまうケースについて、わかりやすく解説します。
自分の向き不向きを把握していない
ADHDのある人たちは、自分に適した職種や業務内容を見極めるのが難しいことが多いです。たとえば、ADHDのある人は、集中力が必要な細かい作業よりも、身体を動かすアクティブな仕事が合っていることがあります。自分の強みを生かせる職場を見つけることで、仕事の充実感が高まり、ストレスが軽減される可能性があります。
障害特性に対する工夫が不十分または不適切
障害特性に対する工夫が不十分または不適切なケースもあります。これは何も能力を超えて無茶をしろというわけではありません。
実例ですが、事務でケアレスミスが絶えないことが問題なのに、チェックリストの作成を行うといった工夫を取らず、なぜか今の業務より上位の資格の勉強を”ケアレスミスの解決策として”行う人がいました。本人も悩んだ末の行動だと思いますし、勉強すること自体は素晴らしいことですが、資格取得は目前のケアレスミスの解決策とはなりえません。
仮に資格を取ったとしても、目前の問題であるケアレスミスへの対策は取らないままですから、その業務においてもケアレスミスを起こし続けることになるでしょう。
このように、自己理解の不十分さが原因でズレた努力をしてしまい、問題が一向に解決しないケースも見受けられます。(「どこかに自分に合う仕事があるはずだ」と転退職を繰り返し続ける青い鳥症候群の人や、資格マニアの人も見かけますね)
障害を隠して働いている
障害を隠して働くことは、ADHDが仕事を辞めたい状況に陥る大きな原因となります。
障害を隠すことで、自分の本当の能力を発揮する機会を逃してしまうかもしれません。職場でADHDについてオープンに話せると、同僚や上司からの理解やサポートを得やすくなります。これが、職場でうまくやっていくための大きな一歩になります。
ADHDであることをオープンにし、自分の特性に合った仕事のやり方を探すことが大切です。たとえば、タスクを小分けにして取り組む、ちょっとした休憩を取る、時間管理を工夫するなど、自分に合った方法を見つけることで、仕事がずっとラクになります。自分らしい働き方を見つけることで、業務の効率も上がり、仕事に対して充実感を感じられるようになります。
ADHDが仕事を辞めたい時にできる退職の事前準備
この章では、ADHDが仕事を辞めたい時にできる退職の事前準備の手順を順番にわかりやすく解説します。
業務を改善する姿勢を見せる(できることでOK)
「退職するのに今の業務を改善するの?」と思われるかもしれません。ですが、円滑に退職するためには、少しでも今の仕事での評価や人間関係を改善しておくとベターです。
もし業務を改善することで、仕事を辞めたくなるような状況がなくなるなら、今の仕事を続けていくという選択肢も生まれるでしょう。
以下に、業務改善の一例として、タスク管理ツールについて解説します。
タスク管理ツールを使用する
タスク管理ツールの利用は、ADHDを持つ人たちには特に有効です。
タスク管理ツールは、仕事の優先順位を設定し、期限を守るのに役立ちます。タスク管理ツールやカレンダーアプリを使用することで、日々の業務を可視化し、計画的に取り組むことが可能になります。
おすすめのカレンダーアプリ
- Lifebear(細かな通知機能が良い)
ADHDの診察の実績が豊富な医師に相談する
ADHDの症状が仕事に影響を与えている場合、専門医の助言を求めることが有効です。ADHDの治療に慣れた医師は、症状を管理し、職場でのパフォーマンスを向上させるための具体的なアドバイスを提供することができます。
障害者雇用の専門家に相談する
障害者雇用に詳しい専門家に相談することも有益です。
専門家が在籍している機関として、
- 就労移行支援
- 障害者雇用専門の転職エージェント
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
などがあります。
これらのサービスは、ADHDの特性に悩む人に合わせた職場を見つけるための支援やアドバイスを行い、職業生活への適応をサポートします。
就労移行支援
就労移行支援は、ADHDやその他の障害を持つ人たちが職場で成功するために役立つサービスです。就労移行の支援を通じて、仕事探しの技術、面接の練習、職場でのコミュニケーション方法など、実務に必要なスキルを学ぶことができます。また、ADHDの特性に合わせた職場環境の探し方や、どのように職場での調整を依頼すれば良いかについてのアドバイスも受けることができます。
多くの就労移行支援では、在職中の相談も受け付けていますので、一度相談してみましょう。
障害者雇用専門の転職エージェント
障害者雇用専門の転職エージェントは、ADHDを含む障害を持つ人々に特化したサービスを提供します。障害者雇用専門の転職エージェントは、障害に理解のある企業を紹介し、転職活動を手厚くサポートしてくれます。また、履歴書の書き方や面接対策など、転職プロセスの各段階で具体的な助言を提供し、適切な職場環境を見つけるお手伝いをします。
障害者雇用専門の転職エージェントも、在職中の相談や登録を受け付けています。特に、早めに転職したい人は積極的に登録してみましょう。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)は、障害を持つ人々のための総合的な支援機関です。就職に関する相談から、日常生活の中での障害に対する対処法まで、幅広い支援を提供しています。職業訓練やキャリアアドバイスのほか、職場での適応に関するサポートも行われており、ADHDを持つ人たちがより良い労働環境を見つけ、維持するための大きな助けとなります。
市内だけでなく、市外のなかぽつも利用できることがありますので、自分に合うなかぽつを利用すると良いでしょう。
退職の一般的な手順
この章では、退職を決めた際の一般的な手順についてわかりやすく解説します。
雇用契約書を探して退職時のルールを調べる
まずは自分が署名した雇用契約書を確認し、退職に関するルールや条件を理解しましょう。この契約書には、退職通知の期間、必要な手続き、その他の重要な情報が記載されています。これを把握することで、退職時の期待や義務を正確に知ることができます。
雇用契約書のルールに従い、1~3か月前に退職の意思を伝える
ほとんどの職場では、退職の意思を事前に通知することが求められます。この期間は通常1~3か月ですが、契約書によって異なります。雇用契約書に定められた通知期間を守ることで、職場との良好な関係を保ちながらスムーズに退職することができます。
退職の意思を上司に伝える
退職の意思を上司に伝えます。先述の通り、雇用契約書に定められた通知期間を必ず守りましょう。
退職の意思を伝えた時の日付と時間を記録しておく
退職の意思を伝えた日付と時間を記録しておきましょう。これは、後になって何か問題が生じたときに証拠となるためです。口頭で伝えた場合は、メールなどの文書で改めて退職の意思を伝えておくと良いでしょう。
引き止めに合った場合はどうするか
稀にですが、退職の意思を伝えた際に、強引な引き止めに遭うこともあります(特に障害者雇用の場合、スキルや対人関係などが業務の水準を満たしていなくても、法定雇用率のために無理やり引き止められてしまうケースがあります)。この場合は決して言い返したりせず、冷静に退職の意思を伝え、帰宅後すぐに退職届を作成し、翌日には郵便局に行き、職場に内容証明郵便で退職届を送付しましょう。
会社の指示に従い退職届などの書類を提出する
退職時には、退職に関連する書類を提出する必要があります。会社から指示された手順に従い、必要な書類を適切に提出しましょう。
会社から離職票を貰う
退職後、離職票を受け取ることが重要です。これは、失業保険の申請や次の職場での雇用に必要な書類です。離職票は退職後速やかに手に入れるようにしましょう。
ハローワークで失業保険の手続きを行う
退職後は、ハローワークを訪れて失業保険の申請を行います。失業保険により、次の職を見つけるまでの間、経済的な支援を受けることができます。手続きに必要な書類を準備し、早めに手続きを行うことが望ましいです。
退職後~転職までにやるべきことの手順
この章では、退職後~転職までにやるべきことの手順をわかりやすく解説します。
プロの支援を受けながら自己理解を深める
退職後は、自分自身とADHDの特性について深く理解することが大切です。就労移行支援や転職エージェントなどのサポートを得て、自分の強み、弱み、ニーズをより明確に理解し、次の職場選びに活かしましょう。自己理解は、職場での適応やパフォーマンスを高めるための重要なステップとなります。
プロの支援を受けながら障害特性に対する適切な対処法を教わる
ADHDの特性に効果的に対処する方法を学ぶことは、次の職場での成功に不可欠です。例えば、時間管理やストレス管理の技術、コミュニケーションスキルの向上など、仕事の効率を高めるための具体的な工夫を専門家から学ぶことができます。これらのスキルは、新しい職場で困難なことが起きた場合に、問題に対処するための強力なツールとなります。
プロの支援を受けながら自分に合った職場を探す
適切な職場環境を見つけることは、ADHDを持つ人にとって特に重要です。支援者や障害者雇用専門の転職エージェントに相談することで、自分の能力を最大限に活かせる職場を見つける支援を受けることができます。彼らは、あなたのニーズに合った職場環境や適切な職種を提案し、効果的な転職活動をサポートします。
この期間を利用して、自分の本当のニーズに合った新しい仕事を見つけ、次の職場での成功への土台を築きましょう。
まとめ
ADHDで仕事を辞めたいという悩みには、色んな感情や考えが絡み合うでしょう。
重要なのは、自分自身の健康と幸福を優先し、適切な判断を下すことです。退職は時として必要不可欠なステップであり、新しい機会への扉を開くこともあります。
- 雇用契約書で指定された期間に従って退職の意思を伝える
- 退職届やその他の必要書類を提出する
- 離職票の受け取りなど、失業保険の手続きを行う
- 適職に出会うにはプロの支援が重要
- プロの支援の下で、自己理解を深め、適切な対策を行い、転職に向けて新たな活動をする
最終的には、自分自身の幸福と職業生活のバランスを見つけることが何よりも重要です。
自分にとって最適な環境を見つけ、能力を最大限に活かすようにしましょう。